帰るというにはまだ遠い

A.B.C-Zがすきです、長くなるようなことはここで書きます、だいたい暑苦しい

ディファイルド

ディファイルド感想を書くつもりだったのに、呪いの文章が出来上がってしまったでござる
戸塚くんの演技をひたすら褒め称えたかったはずなのに…はずなのに…

あれを見てからずっと混乱してて、自分の中での答えが未だに出せていないんだけど、たぶんもうまとまらないから、いまの状態を供養する

だって答えなんかないはなしだった、途方にくれてしまった
いまのわたしには刺さるものばかりだった

本物よりも付加価値のある偽物はいつか新しい本物になる

少し要約してあるけど、これはとあるデザイナーさんが、自身の展示会の紹介文に掲載した言葉の一部分だ
これに出会ってしまったときから、わたしはずっと迷子で、ディファイルドを見たことで余計に分からなくなってしまった

手仕事は尊くて、いつの時代になろうとその価値は揺るがないと信じられたのはいったい何歳までだったろう
少なくとも学生時代のわたしは漠然とそんなものを信じていた
手塩をかけて作った唯一は尊いと、世の中の人達だってそう思っているはずだと

だからもし、18歳のわたしがあの舞台をみたら、ハリーはバカだねと少し泣いて、でも笑って済ませてしまえたかもしれない
なにもそこまでしなくたってと、言えたかもしれない
もしくはもっと大人だったら…ディッキーのように定年間際くらい社会を知っていたら、そんなことは意味がない、変化を受け入れなさいと怒ることが出来たのかもしれない

ひとりぼっちで、ひとりよがりで、たったひとつの居場所を守ろうとした、偏屈なくせにどこまでも純粋な、子供みたいに傷つきやすいハリーをただかわいそうねって思えたかもしれない

だけどいま、機械や工業製品に飲まれそうな瀬戸際にあるものに関わるわたしにはハリーを到底笑い飛ばせなくて、怒ることもできない

伝統工芸の職人のような仕事をしている
職人ですと言い切る自信はない、ぼちぼち機械にも頼る面が増えていて、なんとも言い難い立場になりつつある
それでもまだ、アナログで伝統的な仕事が出来ている
積み重ねた時間が正直に技術に出る、それがまだ誇りとして持てるくらいには
手を動かすことが好きで、その素材が好きで、いまこの仕事をしているけど、わたしはいつまでこれが出来るんだろうとこの半年くらいはかなり揺らいでいる

あらゆるものをオートメーション化して、人手ではなく機械でものつくりを、工房ではなく工場へ
まだ計画段階だけど、簡単にいってしまえば流れはこんなところだ
図書館の手書きのカード目録を撤廃してコンピューターに移行する
ディファイルドのそれとまさに同じ流れの中に、自分がいる

見切りをつけて辞めるべきか、変化を受け入れ関わり続けるべきか
こんな会社で働き続けるなんてごめんだと思いながら、いっそこの工房ごと爆発でもしてぜんぶ終わってしまえばいいのにとおもう瞬間だってあった
そんな折にディファイルドを観劇した

現代におけるアナログの価値ってなんなんだろうね?
探し求める答えは、観劇後も見つからなかった
ただ問われた
それぞれの価値観の中にしか答えはないのだから、考えろと、お前の答えはどこにあるんだと、赤く染まったハリーに言われているような気がしてぞっとした

パンフレットの最初のページは、ことが起こってしまってからの惨状なのだと観劇後に気がついて、もうこの世界にハリーはいないんだと改めて突きつけられて、悲しくてしょうがなかった

立場的にはハリーに感情移入してしまいながら、でも、いかんせんディッキー刑事の言い分だってよーくわかる

大事なものは年齢とともに変わっていくし、守るものは増えていく
戸塚くんがどこかのインタビューで言っていたように、あえて鈍感になって、あらゆることを受け流す術も身につけてきた

ある程度の流れに身を任せてそれに順応していくことはひとつの進化ともいえて、それについて行けないものはただ淘汰される
シンプルな構造だ
大人になるにつれて流れの中にいることはひとつの居心地の良さでもあると知る

コスト、効率、生産性

吐き気がするけど、邪険にも出来ない、いま求められるもの

1000円の品より100円の使い捨て

わたしの、わたしたちのやっていることは、どれも効率が悪くて、そのわりにコストばっかりかかる、生産性の低いお金にならない仕事だ

たくさん作って、売って、お給料あげたいでしょうと言われて、そりゃあまぁと思う社会人のわたしだってちゃんといる
ものが沢山売れてほしいのは本当だし、お給料だって上がってほしい、何よりもっと休みがほしい

だけどこの手の価値はどこに行くんだろう

新しいやり方について行きたくないと早々に見切りをつけて、この業界には戻らないと言い捨てて、でも手を動かすことって楽しいよねと、ぽつりと残して去った先輩の顔が忘れられない
汚くても、怪我をしても、同い年の女性たちのように爪先のお洒落が出来なくても、それでもこの手を動かすことはたのしい
そういう気持ちで、もしかしたらその気持ちだけで、ここに留まっている

悲しいことに、この仕事はいつかなくなるんだろうなって感情のほうがいまはずっとリアルだ
人の心から手作りの価値が消え去るいつかを想像してしまうのが怖い
それは自分の中の諦めの具現のようだから

刑事さんからハリーへの提案のように、欲張らず、どこかちょうどいい場所ってあるんだろうか
偽物はいつか本物になってしまうんだろうか
新しい本物が違和感なく居座るようになる頃、それを後悔する人はいるんだろうか、わたしはそれをみて何を思うんだろう
ハリーはその世界をどんな目で見つめるんだろう

刑事さんの提案は飲まれずに、なにがテクノロジーだと捨て台詞を吐いて消えてしまったハリー、だけど、ほんとにそれで良かったの
それでもあなたの命が大事だって、届いてほしかったのは観客側のエゴだ
大事なものが奪われていくことに耐えられないと叫ぶ彼が、そんな世界で生きていけただろうか

わたしはこうして文句をいいながらもテクノロジーに囲まれなきゃ生きていけない
いまさらスマートフォンを手放すなんて出来ないし、グーグルにはお世話になりっぱなしだ
ボタン一つで大抵のものは手に入る利便性にこれからだって甘え続ける
都合の良いものにはなんの未練もないのに、進化に逆らうだけの情熱は、あるかな、自信ないな
それなりに大事なものも楽しいことも抱えてぬくぬくと生活してるわたしは、あんなさびしい最期なんてやだよ

そう思う自分は、どれだけ考えようとハリーのそばには行けない
そちら側へ行けないなりの答えを出さなきゃならない

ただこれだけは
もし、少しでも心動く何かがあるなら、本があるなら、音楽があるなら、大事に側においてほしい
もし、ハリーの復活のカップのように、これはと思う何かに出会ったら、それが少々値の張るものだとしても、どうか手にとってほしい

見えない誰かにも誠意あるものづくりを、これはわたしの恩師が就職が決まったときに言ってくれた言葉だけど、きっと作り手はみんなそう思って作ってるから
 
わたしはいつか作ることをやめてしまうかもしれないけど、そういうものが、そういう価値観が、せめてずっとなくならないでほしいと願ってる
 
なんて、気取ってること言っちゃって、悶々としながらゴールデンウィークもぜーんぶお仕事です!
皆さんよい休暇を!
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